Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうじょうるてん
生々流転
岡本 かの子
Lesen Sie 生々流転 (しょうじょうるてん) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 297.521 Zeichen · 586 Bildschirme
そこに再び白々として取付きようもない葛岡の顔が残されました。
葛岡は、ふーっと、蘇ったような息を吐いて、
「その口惜しさを、これからの毎日の餌食にしようよ」と言いました。わたくしは、とう/\末頼母しい一人の青年を失った気持に陥りまして思わず手を拳にして、葛岡の肩をはた/\と叩き、
「それで済むの、あんたも男じゃないか。男じゃないか」と噎び泣きながら、声もおろ/\に叫びました。
「――――」
薬屋の小店から、店員らしい男が鴨居に手をかけて身体を乗り出し、わたくしたちの様子を眺め始めました。乗りかけて来た自転車をとめ、足を車の両方へだらりと垂らしたまま見物を始めた出前持もあります。
わたくしは「あー、あー」と歎声を洩して、後口の悪い思いに胸をむかつかせ、なり振りもなく悄気た姿のまゝ、急いで歩き出しました。それを見て、直ぐあとに縋いて来ながら、葛岡は、手を一つわたくしの身体にかけても呉れない佗しさ。わたくしたちは旧魚河岸の通りに来ました。河岸の家並の間から見透かされる日本橋の橋欄。そこには獅子や麒麟の像の橋柱に夕顔いろの灯が点っています。ふだんは月並なものと思っているこれ等のものが、さすがに都会っ子のわたくしに、こういう場合は何か勇気附けるものがあると見えます。