Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しょうじょうるてん

生々流転

岡本 かの子

Lesen Sie 生々流転 (しょうじょうるてん) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 297.521 Zeichen · 586 Bildschirme

Aozora Bunko

一つはこちらが草臥れていたせいもあるでしょうが、わたくしが期待していたほどの劇的な興奮の場面もなく、先生とわたくしとは容易に対面してしまいました。私たちが宿の入口の土間に立つと、安宅先生は広い見通しの部屋の真中の炉にたった一人で当りながら何か原稿を書いていましたが、わたくしの姿を見ると、にっこと笑い、

「あら、来たのね」

そう言って立上って来ました。わたくしはまた、「えゝ、来ましたわ」と言って、顔を斜に俯け、女学生風の含羞を見せただけで、直ぐ雪沓を脱ぎかゝりました。先生は葛岡の方はちらりと見ただけで、わたくしの肩に手をかけ、

「早くおあがりなさい。寒かったでしょうね」

と言いました。そしてわたくしが框に上るのをそのまゝ抱きかゝえるようにして炉端へ連れて行き、わたくしを炉に当らせながら、そこへ周章てゝ出て来た宿のおかみさんに、なるべく清潔な褞袍を選んで持って来さしたり、自分の預品を使ってコヽアを溶いて作るように命じたりしました。

「帯を除って楽にして、この褞袍をお着なさいな――おなか減ってやしない――少し横になって休まなくてもいゝの」

わたくしが、たゞ、こどものようにかぶりを竪に振ったり横に振ったりしさえすれば返事になる、相手はそつのない労り方でした。