Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうじょうるてん
生々流転
岡本 かの子
Lesen Sie 生々流転 (しょうじょうるてん) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 297.521 Zeichen · 586 Bildschirme
こどもの頃から塩煎餅の好きなわたくしは粕壁のおしおせんという名は身に染みてなつかしい声でした。わたくしはたま/\近所からそれを土産に貰って食べるとき、歯を宛てゝ煎餅の片れが潔よく噛み破られる音を、何か無限なものの韻に触れるような期待で聴き惚れるのでした。大事そうに眼を瞑って食むのでした。いま考え事の傍、むざ/\と食べて嚥み下してしまったあとで、ふと気がつく自分や塩煎餅に、わたくしは塩煎餅それ自体も粗悪になってるのでしょうが、自分も粗悪になったものだと軽蔑しないではいられませんでした。
だが、私たちは東武電鉄に乗って、越谷、草加、竹塚、西新井とおい/\大都に近付いて参りますと、わたくしの血は控えても渦巻き上り、うつろと思っていた身体のしんに何か生活廻転のダイナモの震動が地響して感ぜられて来るのでした。わたくしは自分で醜いと思うほど落付きを失って、「まあ、いよ/\東京」と言って、車の窓から乗出さんばかりに眺めます。するとおかしなことに葛岡もにこ/\してわたくしに遅れまいとするように窓を向いて眺めます。
人家の櫛比と煤煙が近づき、車はその中へ突入します。