Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうじょうるてん
生々流転
岡本 かの子
Lesen Sie 生々流転 (しょうじょうるてん) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 297.521 Zeichen · 586 Bildschirme
わたくしは思わずくす/\と笑うと、花田は振返ってじろりと睨めました。そこへ兵庫島が来合わせて鬚面を出しました。
「やあ、眼鏡の花田か」
「折角、当てにしていた山椒の芽を誰かにきれいに摘まれてしまった」
花田は指しました。
「山椒かね」と、兵庫島は覗いて、「きにょう夕方、橋下の文公がとって行った。鮒の甲焼をするだって言ってた」
花田は「えっ」とたまげた顔をしていましたが、「あいつ知っとるのかなあ」と呟きました。それから花田が兵庫島に対してなおぶつ/\愚痴を並べているのを聴きますと――この町には山椒の木は少ない方だがそれでも町裏の製紙工場の社宅の傍にもあれば清光寺の卵塔場にもある。そしていずれも文吉のいる多那川橋には近い。たゞそれ等の山椒の木は若木であるから、実は灰汁が強くて辛味も生々しい。それに引きかえこの劇場わきの老木の新芽というものは脆弱で辛味もこっくりしているのだ。文吉が山椒の葉を採るのに橋に近い清光寺の卵塔場にも行かず、製紙工場の社宅にも行かず、遥かに遠いこの劇場まで来るのは老木の山椒の葉のうまさを知ってのことゝしか思われない。しかし、あんな白痴がそんな微妙なことを知ってそうにはどうしても思われぬ。