Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうじょうるてん
生々流転
岡本 かの子
Lesen Sie 生々流転 (しょうじょうるてん) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 297.521 Zeichen · 586 Bildschirme
だがわたくしはおじさんには何とも返事せず、そのまゝ白痴の乞食の文吉を連れてこの鷺市を出ました。なぜでしょうか。文吉がふだんしきりに海が見たい/\と口癖に言ってるその望みを達しさしてやり度いたゞその為めです。わたくしはこの白痴が口癖に言って而かもまだ遂げないその望みを察するとき、いつも誰にも零れない涙をわれ知らず零すのでした。わたくしはもはや若い母の年齢に達しながら、子というものを持たないためでしょうか。それとももっと大きな人間的なものが女の身の中に動かされるのでしょうか。文吉にこの慾望を達しさしてやることは、いまわたくしの胸に最新鮮な力となって湧いて来ました。
わたくしは文吉に乞食の服装を脱がして普通の青年らしく慥えて連れて行きます。しばらく川の両岸はよしきりの頻りに鳴く葦原つゞき、その間にところ/″\船つき場と漁家が見え、川はだん/\幅を拡めて来ますと、ついに海――。
声をも立て得ずびっくりして青い拡ごりに見向った文吉の眼は、鈍いようにも見え、張り切って冷徹そのものにも見えて来ました。いまその眼球には、寄せては返し、返しては寄する浪が映っています。