Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうじょうるてん
生々流転
岡本 かの子
Lesen Sie 生々流転 (しょうじょうるてん) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 297.521 Zeichen · 586 Bildschirme
わたくしが玄関の呼鈴の紐を引いても一向答えがありません。途方に暮れてぼんやり立ち続けていますと川上の丘の櫟林の方に当って、聞き慣れた犬の吠える声が聞え、銃声も響きます。わたくしは、いつも暮になると安宅先生は校長先生の家の正月のために鴨や野鳥を撃って差上る習慣を思い出しました。
程よい距離を置いて聞えて来る犬の声や銃声は、わたくしに先生に対するなつかしさを取戻させました。そして荒い火薬の爆発する音にしても、一弾を放ってから、その撃ち損じを取り返す為めらしく、追い撃ちにするあと弾との距離の時間に、何となく、女が事を仕損じて、それを償い返す間の、とつおいつ思案する迷いの様子が何かいじらしいように感ぜられます。女らしい仕事の上では何一つ女らしいものは現れないばかりでなく、それを意識して現す場合には、そこに何とも言いようのない嫌味で反撥させられるものが附いて出る、あの唇の両角の上の生毛さえ、うっすり口髭が生えたようにさえ見れば見られないこともない中性的の老嬢美人が、手荒い鉄砲のようなものを扱う場合にそれが却って優しみを帯びて嫋々と人の心に訴えて来る、安宅先生の生れ付きの性質の矛盾を考えながらわたくしは、尚しばらく玄関の外で待っていました。