Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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せいしまんじどもえ

生死卍巴

国枝 史郎

Lesen Sie 生死卍巴 (せいしまんじどもえ) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 91.598 Zeichen · 182 Bildschirme

Aozora Bunko

するとその声が聞こえたのであろう、露路の奥から応ずる声がした。

「おお千賀子殿か、何事でござる!」

つづいて走って来る足の音がしたが、刑部老人が来るのでもあろう。道服めいた衣裳を着て、払子を持った身長の高い翁の、古物商の刑部が露路を走って、露路の口まで出て来た時には、しかし松平碩寿翁は、その辺りにはいなかった。月の光を青々と刎ねて、数間の先を走っていた。

「あッ、ありゃア碩寿翁様だ! ……え、あの方があれを持って? ……ふうむ、さようか、それはそれは。いやそれなら大事ない! 私に取り返す策がある。……が、待てよ、こいつはいけない! ……大変だ大変だかえって大変だ!」

それから三日の日が経った時に、旅よそおいをした一人の武士が、飛騨の峠路を辿っていた。

ほかならぬ宮川茅野雄であった。

巨木が鬱々と繁っていて、峠の路は薄暗く、山蛭などが落ちて来て、気味の悪さも一通りでなかった。と、その時唸りをなして、一本の征矢が飛んで来たが、杉の老幹の一所へ立った。矢文と見えて紙が巻いてある。

「はてな?」と、立ち止まった宮川茅野雄は、手を延ばすと文をほぐし取ったが、開いて読むと血相を変えた。