Japanische Klassiker mit Furigana
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でんえんのまぼろし
田園の幻
豊島 与志雄
Lesen Sie 田園の幻 (でんえんのまぼろし) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.053 Zeichen · 17 Bildschirme
真昼間、農村では最も人目に怪しまれない時間だが、花子はその小さな甲李をいきなり私のところに持ち込んで来た。
「先生、」彼女は思いつめたように言う。「これを預かっておいて下さい。」
否も応もなく、押しつけてしまうのだ。私は少し困った。第一、宗吉のところのこの隠居所に滞在するのも、あと僅かな日数の予定である。
「暫くの間で、よろしいんです。八幡様のお祭りの晩あたり、頂きに来ますから。」
私がお祭りの集いには行かず家に籠ってるだろうと、彼女は見通したのであろう。
「先生なら安心です。甲李をあけて中を御覧なさることもないでしょうし、甲李のことをひとにお話しなさることもないでしょう。秘密にしといて下さい。村の人たちは、誰も、信用が出来ません。」
よそから来た「先生」が、一番信用出来るというのであろうか。
私は彼女とさほど懇意ではない。三好屋というのは、小間物類の雑貨をいろいろ並べ、かたわら居酒屋をやってる店である。主人はもと町の運送屋に働いていて、さまざまなことをやってきた男らしいが、村に引込んでからは、お上さんと二人でその小店を初めた。小布や化粧品などのストックをたくさん持ってるとの噂もある。