Japanische Klassiker mit Furigana
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いなかいしのこ
田舎医師の子
相馬 泰三
Lesen Sie 田舎医師の子 (いなかいしのこ) von 相馬 泰三 (そうまたいぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 37.947 Zeichen · 76 Bildschirme
一つの村、そしてその隣りの村々、町、町々、……五里、十里、二十里……、すべてその通りだ。見渡すかぎり涯なく続くこの耕原の中には、濛々と吐き出すただ一本の煙突の形さえも見出されない。どこまでも澄み切って静かである。あゝ、伝習の静けさ、眠りの静けさ、実に堪えられぬ退屈だ。どこへ行っても、いかなる家を訪れても、そこには「新らしい企て」そんなものは噂にさえ聞くことができないではないか。「何事もなかれ、ただ静かに、ただ静かに。」こういう声が形なく天地に漲っているのだ。
やがて、庸介は大きな息をして、大空を仰ぎ上げた。――これはまた、何という高さであろう。まあ、実に何という美しさであろう。何という事なしにこう、「際涯もなく」という感じがされるではないか。青く青く澄んで、何とも云えず明るい。
足の下の谷々で鳴いている小鳥の声が、一つ一つ強く響き渡って、じーっと耳をすましていると、それ等の遠い近い数限りもない音のために耳の中が一ぱいになってゆく。
庸介はこれらの清らかさ、静けさに酔わされてしばしの間恍惚としていた。が、すぐにそのあとからある寂寥が徐々として彼に襲いかかって来た。