Japanische Klassiker mit Furigana
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いなかもの
田舎者
豊島 与志雄
Lesen Sie 田舎者 (いなかもの) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.181 Zeichen · 26 Bildschirme
「昔のよしみに、飲みにいってやり給えよ。」
依田氏はそう云って愉快そうに笑うのだった。奥さんも別にとめようともしないで、ほんとの初恋になったら大変ねなどと、にこにこしていた。中学を出たばかりの岸本には、それがまた余りに自由主義的で、律義な両親のことなどを比べ考えては、心の落ちつけどころが分らなくなるのだった。
然しそうしたことから、岸本は意外にも依田氏夫妻と親しみが出来、また、寺井菊子のバー・アサヒ(恐らく郷里の旭川からとってきた名前であろう)へも出入するようになった。
初めは、さすがに、様子が分らないので、午後、客のなさそうな時間にいってみた。上野公園を少し歩いて、広小路を二度ばかり往き来して、それから横町に曲ると、すぐに分った。赤黒く塗ってある扉を押してはいると、中は変に薄暗く、高い窓の硝子だけがぎらぎら光って、室の真中に大きな鉢の植木が、お化のようにつっ立っていた。その向うにいろんな瓶の並んでる棚の前に、コップを拭いてる背の高い女がいて、近視眼みたいな眼付でこちらをすかし見ながら、機械的に微笑してみせた。見覚えがあるようなないようなその顔に、岸本は一寸ためらったが、つかつかと歩いていって、お辞儀をした。