Japanische Klassiker mit Furigana
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とめさんとそのおんな
留さんとその女
山本 周五郎
Lesen Sie 留さんとその女 (とめさんとそのおんな) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.799 Zeichen · 14 Bildschirme
彼女は働きだした。
そこで留さんは、船が塩崎泊りの日には、船長を拝み倒して高浦で下船する、そして高浦食堂のどこかの隅で酒を呑んでいる。鼻を刺すような地酒を、それも一合に限って舐めるようにちびちびやっている。――眼尻で絶えず女房の起居を追いながら。
留さんは女房に惚れきっていたのだ、反古のような約束を信じてはるばる潮来から頼って来た女の気持を思うと、いとしくていとしくて喰べてしまいたいくらいなのだ。
「可愛いい阿魔だなあ」
残り少くなった燗徳利をだいじそうに傾けながら、留さんは心から溜息をつく。
客のたてこむときには、彼はのこのこ立って行って、料理場から皿を運んだり、麦酒の壜を片付けたりする、彼はいくらかでも女房の手助けをしてやりたいのだ、すると女は、
「うるさいね!」
と邪険に喚きたてる、「そっちへすっこんどいでな、邪魔じゃないか、馬鹿ばかしい」留さんは悪戯をみつけられた子供のように、首をすくめながらこそこそ自分の席へ戻る。さよう、邪魔をする法はない、女房は自分たちの小商売をする資本を稼ごうとして懸命になっているのだ、たとえ眼の前でよその男と見るに耐えぬ悪ふざけをしたにせよ、それが彼女の稼ぎであるなら云うことはないではないか、彼女がどんなに辛い思いでしているかは自分だけが知っているのだ。