Japanische Klassiker mit Furigana
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とめさんとそのおんな
留さんとその女
山本 周五郎
Lesen Sie 留さんとその女 (とめさんとそのおんな) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.799 Zeichen · 14 Bildschirme
「ひでえ女だ、まあちょっとあんなひでえ女あねえ、まったくよ」
「なんだぎ州……」
みんなはぎ州のほうを振り返った。
ところが彼は瞬きをしながら天井の節穴を数えている。ははあ……そうか。みんなはじきにのみこんだ、彼らはぎ州のやりかたを知っている、そこで椅子がやかましく集まってきた。話せ話せ、いつだ、どこで……?
「ふん」
ぎ州はにやりと笑い、煙草へ火をつけ、それからながいこと天井を見上げたり盃で卓子をこつこつ叩いたりしていた。
「このまえの塩崎泊りの日かな」
と彼はやがて低い声で云う、「そうだ、中の水門でごぜへき(五大力船のことをいう)の舵をおっぺしょった日だから。おらあ栗橋で下りただ、船長に頼まれて買物もあった」
「うめえことをいうな」
「本当だ、山形屋のうどんを買うためだ、あの晩エンヂさんも喰べたべえが」
秋葉エンヂナアが頷いた。
「船が高浦まで行って来るのに一時間ある、留の女ならそれだけあれば沢山だ、おらあ買物をするとまっすぐにでかけて行っただ」
「家は知っていたのけえ」
「山形屋で訊いたさ」
ぎ州は盃の酒をすすって続けた。「三時頃かな……、いやもちっと遅かったんべね、おらあ横庭から廻って行った、すると女は縁側の向うのところで寝転んでいたっけだ」