Japanische Klassiker mit Furigana
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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
Lesen Sie 異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二 (うみがめ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 144.507 Zeichen · 291 Bildschirme
こうなると、誰にでも考えられることは海亀の重量だ。大きい海亀は何貫目の重量があるか、君も知っているだろう。それが無数に乗込んで来て、しかも一匹の甲羅の上に他の一匹が乗る、又その上に一匹が乗るという始末で、かさなりあって乗るのだから堪らない。大石を積んだ小舟とおなじように、僕たちの舟はだんだんに沈んで行くのほかはない。無益とは知りながら、僕は血の出るような声を振りしぼって救いを呼びつづけたが、なにぶんにも岸は遠い。僕が必死の叫び声も、いたずらに水にひびいて消えてゆくばかりだ。これが平生の夜ならば、沖に相当の漁船も出ているのだが、いかんせん今夜は例の迷信で、広い海に一艘の舟も見えない。浜の者どもは盆踊りで夢中になっているらしい。僕たちが必死に苦しみもがいているのを、黙って眺めているのは今夜の月と星ばかりだ。僕たちの無抵抗をあざけるように、敵はいよいよ乗込んで来る。舟は重くなる。舟舷から潮水がだんだんに流れ込んで来る。最後の運命はもう判り切っているので、僕は観念の眼をとじて美智子さんを両手にしっかりと抱いた。子供の時からこの海岸に育った僕だ。これが僕一個であったらば、たとい岸が遠いにもしろ、この場合、運命を賭して泳ぐということもあるが、美智子さんを捨ててゆくことはできない。