Japanische Klassiker mit Furigana
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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
Lesen Sie 異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二 (うみがめ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 144.507 Zeichen · 291 Bildschirme
こうなると、おれも少しのぼせて来て、すぐに右の方へ斬り付けると、婆め今度は左に廻っている。左を斬ると、前に廻っている。前を斬ると、うしろに廻っている。なにしろ雪の激しく降るなかで、白い影のような奴がふわりふわりと動いているのだから、始末に負えない。おれもしまいには夢中になって、滅多なぐりに斬り散らしているうちに、息が切れ、からだが疲れて、そこにどっかりと坐り込んでしまったのだ。」
「婆はどうした。」と、神南が訊いた。
「どうしたか判らない。」と、石川は溜息をついた。「門番の眼にはなんにも見えなかったそうだ。」
「なんだろう。それが雪女郎というものかな。」と、他の一人が言った。
「それとも、やっぱり例の鬼婆かな。」と、又ひとりが言った。
「むむ。」と、主人の織衛はかんがえていた。「越後には雪女郎というものがあると聞いているが、それも嘘だか本当だか判らない。北国でいう雪志巻のたぐいで、激しい雪が強い風に吹き巻かれて女のような形を見せるのだという者もある。鬼ばば横町の鬼婆だっていつの昔のことか判らない。もし果してそんな婆が棲んでいるならば、今までにも誰か出逢った者がありそうなものだが、ついぞそんな噂を聴いたこともないからな。