Japanische Klassiker mit Furigana
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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme
そして非常に此方の呼吸をよく呑み込んで、私のような下手糞を相手にしながら、感のいい馬のようにピタリと息を合わせます。こうなって来ると軽いと云うことそれ自身に得も云われない快感があります。私の心は俄かに浮き浮きと勇み立ち、私の足は自然と活溌なステップを蹈み、あたかもメリー・ゴー・ラウンドへ乗っているように、何処までもするすると、滑かに廻って行きます。
「愉快々々! これは不思議だ、面白いもんだ!」
私は思わずそんな気になりました。
「まあ、お上手ですわ、ちっとも踊りにくいことはございませんわ」
………グルグルグル! 水車のように廻っている最中、綺羅子の声が私の耳を掠めました。………やさしい、かすかな、いかにも綺羅子らしい甘い声でした。………
「いや、そんなことはないでしょう。あなたがお上手だからですよ」
「いいえ、ほんとに、………」
暫く立ってから、又彼女は云いました。
「今夜のバンドは、大へん結構でございますのね」
「はあ」
「音楽がよくないと、折角踊っても何だか張合いがございませんわ」
気がついて見ると、綺羅子の唇はちょうど私のこめかみの下にあるのでした。これがこの女の癖だと見えて、さっき浜田としたように、その横鬢は私の頬へ触れていました。