Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ちじんのあい

痴人の愛

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme

Aozora Bunko

とは行きかねました。表面は和解したようであっても、私は決して、まだほんとうにはナオミに心を許していない。会社へ行っても依然として熊谷のことが心配になる。留守の間の彼女の行動が気になる余り、毎朝家を出かけると見せてこっそり裏口へ立ち廻ったり、彼女が英語や音楽の稽古に行くと云う日は、そっとその跡をつけて行ったり、時々彼女の眼を偸んでは、彼女宛てに来る手紙の内容を調べて見たり、そう云う風にまで私が秘密探偵のような気持になるに随い、ナオミはナオミで、腹の中ではこのしつッこい私のやり方をせせら笑っているらしく、言葉に出して云い争いはしないまでも、変に意地悪い素振りを見せるようになりました。

「おい、ナオミ!」

と、私は或る晩、いやに冷たい顔つきをして寝た振りをしている彼女の体を揺す振りながら、そう云いました。(断って置きますがもうその時分、私は彼女を「ナオミ」と呼びつけにしていたのです)

「何だってそんな………寝たふりなんぞしているんだ? そんなに己が嫌いなのかい?………」

「寝たふりなんかしていやしないわ。寝ようと思って眼を潰っているだけなんだわ」

「じゃあ眼をお開き、人が話をしようとするのに眼を潰っている法はなかろう」