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Japanische Klassiker mit Furigana

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ちじんのあい

痴人の愛

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme

Aozora Bunko

、いかに彼女がそう云うことに敏感であり、器用であり、怜悧であったかを語らないものとてはないのでした。

「ああ飛んでもない! 己はほんとに大変な女を逃がしてしまった」

私は心も狂おしくなり、口惜しまぎれに地団太を蹈み、なおも日記を繰って行くと、まだまだ写真が幾色となく出て来ました。その撮り方はだんだん微に入り、細を穿って、部分々々を大映しにして、鼻の形、眼の形、唇の形、指の形、腕の曲線、肩の曲線、背筋の曲線、脚の曲線、手頸、足頸、肘、膝頭、足の蹠までも写してあり、さながら希臘の彫刻か奈良の仏像か何かを扱うようにしてあるのです。ここに至ってナオミの体は全く芸術品となり、私の眼には実際奈良の仏像以上に完璧なものであるかと思われ、それをしみじみ眺めていると、宗教的な感激さえが湧いて来るようになるのでした。ああ、私は一体どう云う積りでこんな精密な写真を撮って置いたのでしょうか? これがいつかは悲しい記念になると云うことを、予覚してでもいたのでしょうか?

私のナオミを恋うる心は加速度を以て進みました。もう日が暮れて窓の外には夕の星がまたたき始め、うすら寒くさえなって来ましたが、私は朝の十一時から御飯もたべず、火も起さず、電気をつける気力もなく、暗くなって来る家の中を二階へ行ったり、階下へ降りたり、「馬鹿!」