Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ちじんのあい

痴人の愛

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme

Aozora Bunko

と思った私は、突然浜田にひしと抱き着き、その肩の上へ顔を突ッ伏してしまいました。そしてわあッと泣きながら、途轍もない声で叫びました。

「浜田君! 僕は、僕は、………もうあの女をキレイサッパリあきらめたんです!」

「御尤もです! そう仰っしゃるのは御尤もです!」

と、浜田も私に釣り込まれたのか、矢張濁声で云うのでした。

「僕は、ほんとうの事を云うと、ナオミさんには最早や望みがないと云うことを、今日はあなたに宣告する気で来たんですよ。そりゃあの人のことですから、又いつ何時、あなたの所へ平気な顔で現れるかも知れませんが、今では事実、誰も真面目でナオミさんを相手にする者はありゃしないんです。熊谷なんぞに云わせると、まるでみんなが慰み物にしているんで、とても口に出来ないようなヒドイ仇名さえ附いているんです。あなたは今まで、知らない間にどれほど耻を掻かされているか分りゃしません。………」

嘗ては私と同じように熱烈にナオミを恋した浜田、そして私と同じように彼女に背かれてしまった浜田、―――この少年の、悲憤に充ちた、心の底から私の為めを思ってくれる言葉の節々は、鋭いメスで腐った肉を抉り取るような効果がありました。