Japanische Klassiker mit Furigana
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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme
ナオミが未だに曙楼へ行くのだとすれば、ちょうど今頃熊谷を連れて出て来ないとも限らないし、例の毛唐と京浜間を往復しないものでもないし、いずれにしても省線電車の停る所は禁物だと思ったので、
「今日は君には飛んだお手数をかけましたなあ」
と、私は何気なくそう云いながら、先へ立って、横丁を曲って、田圃路にある踏切を越えるようにしました。
「なあに、そんな事は構いません、どうせ一度はこう云う事がありゃしないかと思っていたんです」
「ふむ、君から見たら、僕と云うものは随分滑稽に見えたでしょうね」
「けれども僕も、一時は滑稽だったんだから、あなたを笑う資格はありません。僕はただ、自分の熱が冷めて見ると、あなたを非常にお気の毒だとは思いましたよ」
「しかし君は若いんだからまだいいですよ、僕のように三十幾つにもなって、こんな馬鹿な目を見るなんて、話にも何もなりゃしません。それも君に云われなければ、いつまで馬鹿を続けていたか知れないんだから、………」
田圃へ出ると、晩秋の空はあたかも私を慰めるように、高く、爽やかに晴れていましたが、風がひゅうひゅう強く吹くので、泣いた跡の、脹れぼったい眼の縁がヒリヒリしました。