Japanische Klassiker mit Furigana
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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme
八
トランプだってお花とおんなじ事じゃないの。………」
私は思います、アントニーがクレオパトラに征服されたのも、つまりはこう云う風にして、次第に抵抗力を奪われ、円め込まれてしまったのだろうと。愛する女に自信を持たせるのはいいが、その結果として今度は此方が自信を失うようになる。もうそうなっては容易に女の優越感に打ち勝つことは出来なくなります。そして思わぬ禍がそこから生じるようになります。
八
ちょうどナオミが十八の歳の秋、残暑のきびしい九月初旬の或る夕方のことでした。私はその日、会社の方が暇だったので一時間程早く切り上げて、大森の家へ帰って来ると、思いがけなく門を這入った庭の所に、ついぞ見馴れない一人の少年が、ナオミと何か話しているのを見かけました。
少年の歳は矢張ナオミと同じくらい、上だとしてもせいぜい十九を超えてはいまいと思えました。白地絣の単衣を着て、ヤンキー好みの、派手なリボンの附いている麦藁帽子を被って、ステッキで自分の下駄の先を叩きながらしゃべっている、赭ら顔の、眉毛の濃い、目鼻立ちは悪くないが満面ににきびのある男。ナオミはその男の足下にしゃがんで花壇の蔭に隠れているので、どんな様子をしているのだかはっきり見えませんでした。