Japanische Klassiker mit Furigana
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しろいかべ
白い壁
本庄 陸男
Lesen Sie 白い壁 (しろいかべ) von 本庄 陸男 (ほんじょうむつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.697 Zeichen · 51 Bildschirme
「あたいはね、今日ね、お弁当を持ってきたんだよ」と富次は胸にたたみきれない喜びを露骨にあらわして、平然と使丁に話しかけた。「うそだと思うんだら、見せてやろうか? え?」
図体の大きな使丁は、子供を荷物のように造作なく上り口に運びそこに立っている受持教師にそっぽを向いて話しかけた。
「いやはや、杉本さん、呆れけえった子供ですねえ――この餓鬼あ……」
杉本は生温い両方の掌で、冷えた富次の頬を挾んだ。子供は上眼づかいに恐る恐るそれを見あげる。それを見あげる尖った顎から頬にかけてまっ黒い鬚がかぶさり、眼鏡の奥で黒い瞳が見つめていた。富次はようやくそれが自分の受持教師であることに気づいた。すると彼は紫色の歯ぐきを出してにこりと笑い、さっそく喋りだした。
「あたいはね、先生――お弁当持ってきたよ、あたいん家ではね、昨日……だか何日だか、区役所からこんなにお米を買ってきてさ、そいでねえ、ねえ先生――」
「そうか――」と杉本は答え、まだまだ何か話したげな子供を促して階段を登るのであった。
「またあとで聞くからな、みんなが教室で待ちくたびれてんだろうよ」
そんな単純な喜びを全身に感じてじっとしていられないような子供を、四十名近く杉本は受け持っていた。