Japanische Klassiker mit Furigana
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しらぎく
白菊
夢野 久作
Lesen Sie 白菊 (しらぎく) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.486 Zeichen · 25 Bildschirme
又は現在、極度に鋭敏になっている彼の嗅覚が、その寝台の方向からほのめいて来るチョコレートのような、牛乳のような、甘い甘い芳香に誘われたせいであったかも知れないが……。
彼は丸卓子の蔭を、寝台の一間ばかり手前まで匍って来ると、ソ――ッと顔を上げてみた。思ったよりも薄暗い、寝台の中に瞳を凝らした。
彼は今更のように固唾を嚥んだ。
それは夥しい、美しい黄金色の渦巻毛を、大きな白麻の西洋枕の上に横たえている西洋人の女の児であった。年頃はよくわからないが、恐らくこの部屋中のどの人形よりも端麗な、神々しい眼鼻立ちであったろう。額と鼻筋のすきとおった……眉の長い、睫の濃い、花びらのように頬を紅くした寝顔が、あどけなく開いた小さな唇から、キレイな乳歯をあらわしながら、こころもちこっち向きに傾いているのであった。
その枕元には萎れた秋草の花束と、二三冊の絵本と、明日のおめざらしい西洋菓子が二つ、白紙に包んで置いてあった。そうしてその寝台の裾の床の上には、少女よりも心持ち大きいかと思われる棕梠の毛製の熊が一匹、少女の眠りを守護るかのように、黒い、ビックリした瞳を見開きながら、寝台に倚りかかって坐っているのであった。