Japanische Klassiker mit Furigana
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しろあり
白蟻
小栗 虫太郎
Lesen Sie 白蟻 (しろあり) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 54.099 Zeichen · 106 Bildschirme
あの時は、稚市どころか、どんな驚くようなものでも――私には、創り上げるだけの精神力が具わっておりました。断じて、癩ではございませんわ。その証拠には、これを御覧あそばしたら……」
そう云って滝人は、稚市を抱き上げてきて、膝の上で逆さに吊し上げ、その足首に唇を当てがって、さも愛撫するように舐めはじめた。唾液がぬるぬると足首から滴り下ち、それが、ふっ切れた膿のように思えた。が、滝人には、そうしている動作にも、異様な冷たさや落ち着きがあって、やがて舐め飽きると、今度は試験管でも透かし見るように、稚市の身体を、これよとばかりに高く吊し上げた。
「このとおりでございますもの。稚市のこれが、先夫遺伝でさえなければ……。まさに先夫遺伝なのでございますの。でも、私には貴方以外に、恋人もなければ、夫もないはずです。そうしますと、その先夫というのが、いったい何者に当るのでございましょうか。だいたい先夫遺伝といえば、前の夫の影響が、後の夫の子に影響するのを云うのですけど、たいていは、皮膚か眼か髪の色か傷痕くらいのところで、私のような場合は、おそらく万が稀――稀中の奇と云っても差支えないだろうと思われますわ。