Japanische Klassiker mit Furigana
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しろあり
白蟻
小栗 虫太郎
Lesen Sie 白蟻 (しろあり) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 54.099 Zeichen · 106 Bildschirme
すると、その三重の人物が、滝人の頭の中で絡み合ってきて、それをどういうふうに按配したらいいのか――そうしてしばらくのあいだ、それぞれに割付けねばならない、役割の事で悩まねばならなかった。しかしそのようにいろいろな考えが、成長しては積り重なってゆくうちに、どれもこれも纏まりのつかない、空想的な形に見えだしてきたが、そのうち、突然に彼女は、がんと頭を撲たれたような気がした。そして、思わず眼が昏むのを覚えた。
今まであの隧道の惨事以来、彼女に絶えず囁きつづけていた、高代という一事が、今度も滝人の前に二つ幻像となって現われた。それは、最初鵜飼の腸綿の中に現われて以来、あるいはくらの瞳の中に映ったり、また数形式の幻ともなって、時江を脅かした事もあった。けれども、いよいよ最後には二つの形をとり、滝人の企てを凱歌に導こうとしたのである。漠として形のない、心の像のみで相手を斃す――それは、誰しも望むべくして得られない、殺人の形式として、おそらく最高のものではないか。
午後の雷雨のために、湿気が吹き払われたせいか、山峡の宵深くは、真夏とも思われぬ冷気に凍えるのを感じた。