Japanische Klassiker mit Furigana
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ひゃくしょうやのすけのはなし
百姓弥之助の話
中里 介山
Lesen Sie 百姓弥之助の話 (ひゃくしょうやのすけのはなし) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 51.621 Zeichen · 99 Bildschirme
それからこんと云うのはどう云う字を宛てはめたらいいか解らないが、これは川や堀の流れの底の知れない最も深い淵に住んで居て通る人を見かけては淵の中へ引っ張り込んでしまうのである。どこの若い衆が夜遊び帰りにこんに引っ込まれたとか、どこの娘がこんに引き込まれたとか云ううわさを絶えず耳にして居たものだ、そうしてこんに引っ張られるものは大てい若い男女に限られて居た様だ、それ程こんのうわさは絶えなかったにかかわらず、こんと云う者の正体はだれの口からも具体化されて物語られたことはない、たとえば狐でも狸でもテンマルでもミコシ入道でも幽霊でもモモンガーでもカマイタチでもデーダラボッチでもそれぞれのグロが皆相当の形体を附与されて表現されるのに、このこんばかりは誰もどんな形をして居るか説明したものはなく、またこればっかりは探究心の強い子供もその正体を追究することなしに、ただこんが引くこんが引くと云う事だけで通されて居た、こんと云うのは或は「魂」と云う字を宛てはめたら近いのかとも思われる。そうしてその淵々の底の見え通らない青みを帯びた俗に「青んぶく」というすごい所にのみ棲んで居て、その引っ張り込む者が重に若い男女であるところを見るとこれは身投げとか心中とかいうものではなかったかと思われる。