Japanische Klassiker mit Furigana
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めをひらく
眼を開く
夢野 久作
Lesen Sie 眼を開く (めをひらく) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.759 Zeichen · 20 Bildschirme
私は若い時分に、創作に専心したいために或る山奥の空家に引込んで、自炊生活をやったことがある。そうしてその時に、人間というものの極く僅かばかりの不注意とか、手遅れとかいうものが、如何に深刻な悲劇を構成するものであるかということをシミジミ思い知らせられる出来事にぶつかったものである。
つまり私は、そうした隠遁生活をして、浮世離れた創作に熱中していたために、法律にかからない一つの殺人罪を犯したのであった。そうして私の良心の片隅に、生涯忘れることの出来ない深い疵を残したのであった。
その私が隠遁生活をしていた場所というのは、山の麓の村落から谿谷の間の岨道を、一里ばかり上った処に在る或る富豪の別荘で、荒れ果てた西洋風の花壇や、温突仕掛にした立派な浴室附の寝室が在ったが、私は、その枯れ残った秋草の花の身に泌むような色彩を見下す寝室の窓の前に机を据え、米や塩や、乾物、缶詰なぞいう食料品を多量に運び込み、温突用の薪を山積して、丸一と冬をその中で過す準備を整え、毎日毎日ペンを走らした原稿紙が十枚十五枚と分厚く溜まるのを、吝ん坊が金を溜めるような気持で楽しんでいた。