Japanische Klassiker mit Furigana
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いしころみち
石ころ路
田畑 修一郎
Lesen Sie 石ころ路 (いしころみち) von 田畑 修一郎 (たばたしゅういちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.254 Zeichen · 39 Bildschirme
草地は厚くて日に温もっていて、いつのまにか身体じゅうがぼうとなってくる。海からの風がたえ間なく顔の上を吹いて通る。耳のすぐ傍で虫の羽音がする。海の上には何もない。むやみと広いばかりでいつまでたってもそこには何も起きない。僕は自分をどっかへ置き忘れてしまったような気になる。何かあったのだ、何か起ったのだ。僕は思いだそうとしてみる。だが、ちっとも僕のところへはやってこようとしない。僕には遠い不快な記憶のようなものがあり、それと今の僕との間にはある断絶がある。ふいに鋭い皮肉な心持が湧き上る。あれはあれで、これはこれだ。どれもたしかなものはない。どこにもたしかなものはない。あったらお目にかかろう。僕は何にでも身を任かせる気になる。そして鈍い気倦るいものの中に身を包まれてしまう。が、またもやふいに予知しない原因のわからない鋭い痛みが胸をつき上げてくる。どこから、なぜ。そして次の瞬間にはわかってくる。妻、子、友人、仕事、生活というやつ。自分というもの。そういうものをおれはみんな信じない。何かがおれからそれを信ずる力を抜きとってしまったのだ。そいつに訊いてくれ。