Japanische Klassiker mit Furigana
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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
Lesen Sie 石狩川 (いしかりがわ) von 本庄 陸男 (ほんじょうむつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 253.535 Zeichen · 506 Bildschirme
「ああ、もう、よし、よし」
「よし、と、仰せられますのは?――」
「いずれ明日――明日の手配をよろしくおたのみして置きますぞ、――さて何分とも疲れておる、着換えをいたしたい、これ」
唐紙の外に控えていた小間使が衣類をささげてはいって来た。
「思わず長談義をいたしました、年寄りの愚痴でござりましょう」
「いや、いや、そなたの胸のうちはよく判っておる」
そこで話は打ちきられた。邦夷は立って、小間使どもに着換えをさせながら、退って行く神山外記にうなずいて見せた。
入れかわりに夫人がはいって来た。
「ようお帰りなさいました」
脱ぎ棄てたものの後片づけをしている女どもは手をついてお辞儀をした。退出しなければならぬものを、彼女らは彼女らなりに感じていた。
「はい、はい――」と夫人は云った、「それではお膳部を早うしていただきますように」
そう云いつけた。
二人だけになったのだ。一膝にじり出た。そして志津子夫人は涙ぐんだ。どれだけ会いたかったことか。どれだけ待っていたことか。身じまいをしている間も、そわそわして、あれも話そうこれも語ろうと考えていたのだ。けれども、その人の前に出れば一つも云うことは思い浮ばなかった。