Japanische Klassiker mit Furigana
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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
Lesen Sie 石狩川 (いしかりがわ) von 本庄 陸男 (ほんじょうむつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 253.535 Zeichen · 506 Bildschirme
執こく呼びかけて来る声に向って眼をすえた。
藩士のうちのこの一人に、――彼をこの場にみちびいた吉原兵太郎に、いまだに真意がとどかなかった。通ずるかけ橋が初めからなかったのかも知れない。あるいはそのものの感情がいたずらに昂ぶって、こちらの説得を受けつけなくなっていた。
そむき去って、逆に離れて、いまはもう、この上施すすべも無くなった。そう見きわめたとき、阿賀妻の沈んだ瞳に青い生気が燃えるのだ。つめたい、憎しみであった。
「うけたまわろう――」と彼は云った。
云いかかって行く方も最後の切札であった。やぶれかぶれの大声であった。
「たとえて申すならば、かの榎本釜次郎どのらの罪業と、わが藩の行動を、ここでひきくらべて見ましょう」
「だまれ!」
はッと吉原は上半身をのしあげた。いきおい込んでいた彼にとって、この大喝は、まッ向からどさッとぶち当った。問いかえす間もなく、阿賀妻は満面に朱をそそいで云った。
「身のほど知らずめ、海軍お取り立てのため将軍家の命によって留学なされた榎本どのと同日に論ぜられるか、フランス仕込みの新知識じゃ、海軍奉行榎本どのと比較するとは、身びいきにも程があろう、無くてかなわぬご仁があれば、無くもがなの身の上もある、おのれにとっては、辛くはあるが、この辛さには乗りこえねばなるまいが、と思えばこそ――」