Japanische Klassiker mit Furigana
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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
Lesen Sie 石狩川 (いしかりがわ) von 本庄 陸男 (ほんじょうむつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 253.535 Zeichen · 506 Bildschirme
原始のままに放りだされた樹林の濤には際涯が無い。――青くけぶって、西北の彼方に見えるのがマシケの山々。その麓からシラッカリの渓谷を越え、尾根をわたればわれらのトウベツの地。しかしここからは望見することも出来ないのだ。それほど奥まった地を自分の手で捜しあて、そこに行くことを、有りがたき仕合せとしているのが阿賀妻らの立場である。明るみから暗いところへ、曲りなりにも緒についた官の意企に従って、そう――微かながらも植えつけられた文明の場所から、彼らは進んで、求めて、榛莽の密林の土地に脱げこもうとしている。
二人の男は、どちらもはなはだ表情に乏しい。彼らの時代がそういうふうに訓練していた。苦楽や喜憂に特別心をみだすほどのことはないのだ。ただその芯には、つめたい鉄の棒みたいな意志を埋め、しわりしわりと瞬きをしている。
落日に向って彼らの馬は急いでいた。手綱をしゃくられて長い頸を立てる馬は、ふりかぶる鬣の下に丸い眼を見ひらいた。ぎらりと赤い夕陽が反射した。堀大主典の馬がだく足で前に出る。せまい刈分け路では二頭の馬は轡を並べる余地が無かった。むろん、もはやお互いでも、話すべき何ものもなかった。