Japanische Klassiker mit Furigana
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しんぴこんちゅうかん
神秘昆虫館
国枝 史郎
Lesen Sie 神秘昆虫館 (しんぴこんちゅうかん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 105.803 Zeichen · 213 Bildschirme
……蝶々をご存知ではございますまいか」
どこにいるのだろう、声の主は? 木立があって、藪があって、後は吹きさらしの、小梅田圃。女の姿などどこにも見えない。それにもかかわらず女の声は、すぐ手近から聞こえるのであった。
「もしご存知でございましたら、昆虫館までお届けください」
するとどうだろう、それに続いて、老人の声が聞こえて来た。「娘よ、駄目だよ、永生の蝶、何んのこういう人達に、探し出すことが出来るものか」
非常に威厳のある声であった。手近の所から聞こえて来る。だがやっぱり姿は見えない。
「人殺しをしようという人間に、永久に生きる神秘の蝶が、何んの何んの探し出せるものか」老人の声がまた聞こえた。「さあ娘よ、そろそろ行こう」
「はい、お父様」と女の声がした。「それでは他へ参りましょう」それから優しくもう一度云った。「お止めなさりませ……お侍様……殺生のことはね……さようなら」
もうそれだけしか聞こえなかった。立ち去る足音もしなかった。声だけが突然土から生れ、倏忽と空へ消えたようであった。
風が少しく強まったらしい。藪がザワザワと揺れ出した。
刀を宙へ振り上げたまま、じっと聞き澄ましていた一式小一郎、で思わず溜息をしたものである。