Japanische Klassiker mit Furigana
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しんぴこんちゅうかん
神秘昆虫館
国枝 史郎
Lesen Sie 神秘昆虫館 (しんぴこんちゅうかん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 105.803 Zeichen · 213 Bildschirme
……鯱丸!」と俄然いかつくなった。
「船をお廻わし、陸の方へ! 街道の方へお近付け!」
「はい」と云ったが神妙であった。鯱丸はグ――ッと綱を引いた。ハタハタハタ、ハタハタハタと、方向が変えられた幾個の帆は風を孕んで靡いたが、筏船は素早く方向を変え、街道筋の方へ辷り出した。
と、間もなく街道が――東海道の陸の影が、遙かにぼんやりと見えて来た。
「鯱丸」とまたも命令的に、「さあさあ松火へ火をおつけ!」
カチッ! と燧石の音がした。すぐにボ――ッと火が立った。鯱丸が松火を点したのである。
「およこし」と云ったが老婦人は、松火を取ると頭上へかざし、二、三度グルグルと渦を描いた。
と、どうだろう、それに答えて、陸から松火の桃色の火が、一点ポッツリと見えたではないか。
何者かそこにいると見える。
何者どころではない行列なのであった。
頭髪こそ削らずに切り下げとして、肩へ掛けてはいたけれど、無地の鼠の衣裳の上へ、腰衣を纒い袈裟をかけた、尼の一団が足並みを揃え、その数およそ三、四十人、トットと走っているのであった。
有髪の尼僧の一団なのである。
筏船に乗っている老婦人も、全く同じ姿であった。