Japanische Klassiker mit Furigana
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しんろのまき
神鷺之巻
泉 鏡花
Lesen Sie 神鷺之巻 (しんろのまき) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 26.672 Zeichen · 54 Bildschirme
爺さんは、とかく、手に取れそうな、峰の堂――絵馬の裡へ、銑吉を上らせまいとするのである。
第一可恐いのは、明神の拝殿の蔀うち、すぐの承塵に、いつの昔に奉納したのか薙刀が一振かかっている。勿論誰も手を触れず、いつ研いだ事もないのに、切味の鋭さは、月の影に翔込む梟、小春日になく山鳩は構いない。いたずらものの野鼠は真二つになって落ち、ぬたくる蛇は寸断になって蠢くほどで、虫、獣も、今は恐れて、床、天井を損わない。
人間なりとて、心柄によっては無事では済まない。かねて禁断であるものを、色に盲いて血気な徒が、分別を取はずし、夜中、御堂へ、村の娘を連込んだものがあった。隔ての帳も、簾もないのに――
――それが、何と、明い月夜よ。明神様もけなりがッつろと、二十三夜の月待の夜話に、森へ下弦の月がかかるのを見て饒舌った。不埒を働いてから十五年。四十を越えて、それまでは内々恐れて、黙っていたのだが、――祟るものか、この通り、と鼻をさして、何の罰が当るかい。――舌も引かぬに、天井から、青い光がさし、その百姓屋の壁を抜いて、散りかかる柳の刃がキラリと座のものの目に輝いた時、色男の顔から血しぶきが立って、そぎ落された低い鼻が、守宮のように、畳でピチピチと刎ねた事さえある。