Japanische Klassiker mit Furigana
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わたしのりれきしょ
私の履歴書
井上 貞治郎
Lesen Sie 私の履歴書 (わたしのりれきしょ) von 井上 貞治郎 (いのうえていじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 34.380 Zeichen · 69 Bildschirme
金がないからこそ、人買いの悪党をも恩人とせねばならない。『ああ金がほしい。それもまじめに働いてもうけた金がほしい……』
まじめに働こう。これまでのような放浪生活とはきっぱり縁を切って地道に暮そう。いまから思えば大陸生活で私が得た、たった一つのものはこの決心だったかもしれない。そして私は「金なくして人生なし」という私なりの哲学を持つようになった。
こうなると妙なもので、阪大に『大阪へ帰れば家がある』とうそをついたのが気になり出した。あす神戸へ入港するという日、苦悩を重ねた末、やり切れなくなって私は阪大に事実を打ちあけ謝罪したのである。真の裸一貫から清い成功への一路を突進しようと決心した私だが、そのためには親類縁者との交渉を断ち、いっさいの虚飾を捨てた生活が必要である。大阪もいや、神戸、横浜もいや、知った人が一人もいない東京で働こう、また同じ働くなら人のいちばん集まったおひざもとの東京で働こうと私は考えた。
阪大を誘って東京へ着いた。といって彼と離れれば、そのときから金のつるを失ってしまう。ああでもない、こうでもないと東京の町を阪大にくっついて離れずにいたのだが、これにはさすがの悪党もあきれ、ほとほと閉口してしまったらしい。