Japanische Klassiker mit Furigana
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わたしのはは
私の母
堺 利彦
Lesen Sie 私の母 (わたしのはは) von 堺 利彦 (さかいとしひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.425 Zeichen · 11 Bildschirme
しかし耳学問はかなりに出来ていた。里方の志津野家が少し学問系統の家であったのと、三十幾つまで「行かず後家」の境遇にあったのとのためだろう、浄瑠璃とか、草双紙とか、軍談とかいうような物には、大ぶん聞きかじりで通じていた。私らを教訓する時、よく浄瑠璃の文句が引き言にされていた。そういう意味から言えば、私らは、父の方よりも、母の方からヨリ多く教育されていた。
母はまた、憐みぶかい性質であった。折々門に来て立つ乞食のたぐいなどに対して、いつも温かい言葉をかけていた。猫を可愛がることも、私は母から教えられたような気がした。母は不器用なかたちで、風流と言ったような、気のきいた点は少しもなかったが、それでいて自然の美に対する素朴なアコガレを持っていた。例えば、活け花などという物に対しては、母はほとんど何の感興をも持っていなかったようだが、山や川などに対しては、「おおええ景色じゃなア」などと、覚えず感嘆の叫びを発したりすることがあった。そして、私は、母の感嘆の叫びに依って、自分の目が開いたような気がしていた。
母はまた、すこしばかり和歌をやっていた。これはただ、里方における周囲から自然に養われたことで、母にそういう才能があったとは思われない。