Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記 (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 116.638 Zeichen · 233 Bildschirme
それが血で耕されるような季節こそ人間最大な不幸の時期に当りましょう。思えば北条殿、新田殿、足利殿、また後醍醐のきみや、幾多の連枝、廷臣もみなこの時に生れ合せて、いやでも越えねばならぬ悪時代をこえるために戦ったものとも申せましょうか。……と私は考えるのです。そう思い去り思い来ると、何十万の白骨もくるめて、上下なく、誰も彼も、ただあわれでなりません。……このあわれを誰よりもよく知って、人間の叡智を持てと、あえてすべてを祈りへ捧げて壮烈な自滅を取ッたようなお方もただ一人はありました」
問「それはどなたです」
答「正成どのです」
衆「……ああ、げにも」
問「しかし、それでは運命とは何と不公平なものでしょう。楠木殿のようなお方もある一方、佐々木道誉どののような世渡り上手で狡いお人が、憎ていにいよいよ栄えておりましょうがな。やはり正直者はばかをみるということですかな」
答「さよう一概にはいえませぬ。道誉どのの無節操や婆娑羅ぶりも、武門の風潮で、あのお方一個が狡くて驕慢なわけでもない。むしろ憚りなく、生きたい生き方をやって退けるなどは、それも一流の正直で独自な頭の良さともいえましょうか」