Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記 (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 116.638 Zeichen · 233 Bildschirme
独り合点にうなずいた。――前年、甥の師秋がやってのけた或る前例が、彼には思い出されていたのである。
その師秋は、菊亭殿の息女に目をつけて、言いよっていたが、備前佐々木党の信胤もまた、同じ美果を狙っていた。で、菊亭殿ではそれを理由にうまく断わった。――すると師秋は一夜、菊亭家へ忍び入り、うむをいわせず、女を攫って来てしまった。――師直は、これを聞いている。甥のやったその手に限ると、兵をやって、姫を奪い、さる女院の古館へ匿って、夜ごと夜ごと、通い初めていたのだった。
ところが、この女性には、前々からの愛人があった。
師直は感づいて、大いに嫉妬し、女を責めただしてみたところ、相手は大炊ノ大納言冬信とわかった。
ここに醜男の彼の面目がある。
「大炊の家を焼き払え!」
師直のいいつけで、若党ばら一群の者が、一夜、大炊の邸に火をつけて焼き払ってしまった。そのさい、冬信の七歳の娘が焼け死んだ。それらもまた、話題にからんで、
「いやもう、女のこととなるとおそろしい御執事殿だ」
と、京中の評判になった。
が、師直は、評判など気にもしない。そのご女は今出川の館に入れて、側室のひとりにおさめてしまった。