Japanische Klassiker mit Furigana
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ちちぶのけいこくび
秩父の渓谷美
木暮 理太郎
Lesen Sie 秩父の渓谷美 (ちちぶのけいこくび) von 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.963 Zeichen · 10 Bildschirme
つまり秩父では、昔の文人の多くが山水を賞美する場合のように、両岸に岩骨を露出した怪岩奇峰を眺めることのみが目的であってはならないのである。若し岩壁の豪宕壮大なる、渓流の奔放激越せる、若くは飛瀑の奇姿縦横なるものを覓めたならば、瀞八町であろうが、長門峡であろうが、或は石狩川の大箱小箱であろうが、到底黒部峡谷に及ぶものではない。私は耶馬渓を指して天下第一と称した山陽先生を地下に起して、黒部の鐘釣附近でもよいから之を見せしめたならば、何と言われるか聞きたいものだと思う。
しかし秩父にも、黒部などにこそ比較にもならないが、岩壁飛瀑の見る可きものが無い訳ではない。昇仙峡の覚円峰などは、天竜峡で第一の称ある竜角峰よりは、遥にすぐれて立派である。笛吹川の一の釜の瀑、荒川の上流入川谷の木賊瀑、釜沢の両門瀑などは、相当に見られる瀑である。我国の渓谷のすぐれた景色は、火山岩にもあり、又石灰岩にもあり、殊に洞窟はそうであるが、花崗岩の方が地域が広いだけに立派な渓谷が多い。秩父も奥山の過半は花崗岩であるから、そこに美しい渓谷が存在することは怪しむに足らないとしても、渓谷に沿うた深林の中のさまよい歩き、それが秩父では私に取りて最も懐しいものなのである。