Japanische Klassiker mit Furigana
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ちちぶのけいこくび
秩父の渓谷美
木暮 理太郎
Lesen Sie 秩父の渓谷美 (ちちぶのけいこくび) von 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.963 Zeichen · 10 Bildschirme
法螺ノ貝とはうまく付けた名で、全く珍しい形である。
法螺ノ貝から上流は、一旦開けた河原が再び狭くなって、磨いたように滑かな絶壁に両岸を取り囲まれる。殊に鶏冠山の側は、五、六十丈を超えた壮大なものである。両岸から落ち込む沢は、皆落ち口に滝を懸けている、高いものは四、五丈もあろう。そして沢の屈曲が多いから、少しの弛みもない。それでいてこの屏風を建て廻したような河床を楽にあちこちと徒渉しながら通行し得るのは、何たる幸福なことであろう。
この附近は谷幅も狭く、一面に黒木青木に被われているから、昼も木の下闇が谷底を薄暗く罩めている所さえある。唯岩崖に咲く日蔭躑躅の上品な黄花がほのかに明るい色を浮べ、小岩桜の紅花が時に眼を楽しませる外に、盛り上るように花をつけた石楠や躑躅の大群落が思わず足をとめて眼を見張らせるであろう。
信州沢は唯美しい沢であるという外に適当な言葉を見出せない。傾斜の少し急な一とつづきの花崗岩から成る白い河床を、谷水は瀬となり滝となり淵となって、楽しげに躍りつ滑りつして来るとでもいうたら、幾分想像がつくかも知れない。水は如何にも清冷で、岩面に水垢が着かないから少しも滑る虞がない、それで極めて安易に水の中を登って行かれるのである。