Japanische Klassiker mit Furigana
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あるゆうかくでのできごと
空にむかひて
若杉 鳥子
Lesen Sie 空にむかひて (あるゆうかくでのできごと) von 若杉 鳥子 (わかすぎとりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.677 Zeichen · 46 Bildschirme
客の素性を知ってしまった今は、その客の噂を耳にするさえ悪寒がしたそうだ。
昔からよくある慣いの事ではあるが、生来残忍な自暴自棄の彼だから、忽ち復讐心に燃えずにはいられなかった。
ある日の夕方、みどりは赤い長襦袢一つで、お風呂から上がって女部屋の鏡台に向かっていた。
綺麗に掃除がすんでお客の上がる入り口の閾の上にピラミッド式の盛り塩が、三つばかり人待ち顔に並んでいた。
其処からツカツカと入って来たのは彼だった。H楼の人達は、彼を見るなりギクッとして互いに狼狽したけれども、もうみどりを押し隠すひまも何もなかった。
櫛を持って前髪をかいていたみどりは背後から、
『みどり――』
そう呼びかけられて何気なく振り向こうとした刹那、みどりは火のような叫び声を挙げて突然往来へ飛び出した。
その時彼女の肩口から、血潮がどんな風にどうだったか、冷静に見ていた人はひとりもない。兎に角みどりは切られながらも全力を挙げて隣家のF楼へ遁げこんだが、刀を提げた彼の男は執拗に女を追った。
みどりはF楼へ救いを求めたのだったが、もうこうなっては、誰も彼も傍観者だ! 血眼になって追い迫る男を見ては、声を出す事すらできなかった。