Japanische Klassiker mit Furigana
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どうてい
童貞
豊島 与志雄
Lesen Sie 童貞 (どうてい) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.314 Zeichen · 13 Bildschirme
「あたし、何だか顔見られるのが嫌なのよ。」
畜生……と思って黙ってると、顔が真向になってきた。
「何を考えてるの。」
「困った。……君が好きになりそうだ。」
「そう、嘘にせよ嬉しいわ。」
二重眼瞼の眼が、瞬くたびに微笑んでいた。それが、なりそうどころではなく、本当に可愛くて好きになった。
どうしたらいいか分らなかった。
すぐそこに近々と微笑んでる眼が、いつまでも消えなかった。
それが、夢にも……現にも……朝まで続いた。他の一切はどうなったって構わない。その眼だけが……。
八重という名前の下に、「さん」をつけ、「ちゃん」をつけ、「子」をつけ、更にまた、「子」に「さん」や「ちゃん」をつけ……あらゆる名前で呼んでみた。そして最後に、八重子……。ちらちらとする眼が微笑んでいた。
母が二三度起しに来た。上の空で返事をして、やはり頭から布団にもぐりこんでいた。温気に息苦しくなると、頭を覗き出して眼をつぶった。
我慢出来なくなって起き上った。もう十一時を過ぎていた。
「加減でも悪いんですか。」
「何ともありません。」
冷たい水で顔を洗った。悲壮な気持だった。……母なんか、家なんか、何もかも、どうとでもなってしまえ。