Japanische Klassiker mit Furigana
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わらうおしおんな
笑う唖女
夢野 久作
Lesen Sie 笑う唖女 (わらうおしおんな) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.719 Zeichen · 31 Bildschirme
……それは彼の生れて初めての過失であると同時に、彼の良心の最後の致命傷であった。
その後、その重大な過失の相手である唖女のお花が行衛不明となり、そのお花の言葉を理解し得るタッタ一人の父親、門八が、彼女を無くした悲しみの余りに首を縊って死んだと聞いた時には彼は、正直のところホッとしたものであった。最早、天地の間に彼の秘密を知っている者は一人も無い。この僅かな秘密の記憶一つを、彼自身がキレイに忘れて終いさえすれば、彼は今まで通りの完全無欠の童貞……絶対無垢の青年として評判の美人……初枝を娶る事が出来るのだ。
「おお神様。神様。どうぞこの秘密をお守り下さい。この私の罪をお忘れ下さい。もう決して……決して二度とコンナ事をしませんから……」
と彼は人知れず物蔭で、手を合わせた事さえ在ったくらい、そうした思い出そのものを恐れ、戦き、後悔していた。そうして彼は幸福にも一日一日と日を送って行くうちに、もう殆んど、そうした良心の傷手を忘れかけていた。彼は彼自身の社会に対する一切の野心と慾望を擲って、美人の妻と一所に田舎に埋もれるという、涙ぐましいほどに甘美な夢を、安心して、夜となく昼となく逐い続けているところであった。