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Japanische Klassiker mit Furigana

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そろばんがこいをかたるはなし

算盤が恋を語る話

江戸川 乱歩

Lesen Sie 算盤が恋を語る話 (そろばんがこいをかたるはなし) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.096 Zeichen · 16 Bildschirme

Aozora Bunko

若しや、今算盤をおいている所を見られはしなかったか。彼はビクビクしながらS子の顔を見ました。しかし、仕合せにも、彼女は何も知らぬ様にいつもの丁寧なあいさつをして自席に着きました。

事務室にはTとS子ただ二人切りでした。

「今度の××丸はもうやがてボイラーを取つける時分ですが、製造原価の方も大分かさみましたろうね」

Tはてれ隠しの様にこんなことを問いかけました。臆病者の彼はこうした絶好の機会にも、とても仕事以外のことは口がきけないのです。

「ええ、工賃をまぜるともう八十万円を越しましたわ」

S子はちらっとTの顔を見て真面目な口調で答えました。

「そうですか。今度のは大分大仕事ですね。でもうまいもんですよ。そいつを倍にも売りつけるんですからね」

ああ、おれは飛んでもない下品なことをいってしまった。Tはそれに気づくと思わず顔を赤くしました。この普通の人々には何でもない様なことがTには非常に気になるのです。そして、その赤面した所を相手に見られたという意識が、彼のほおを一層ほてらします。彼は変な空せきをしながら、あらぬ方を向いてそれをごまかそうとしました。しかし、S子は、この立派な口ひげをはやした上役のTが、まさかそんなことで狼狽していようとは気づきませんから、何気なく彼の言葉に合づちを打つのでした。