Japanische Klassiker mit Furigana
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はこねのやま
箱根の山
田中 英光
Lesen Sie 箱根の山 (はこねのやま) von 田中 英光 (たなかひでみつ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.963 Zeichen · 33 Bildschirme
、「ハコネノヤマハエンカノケン カンゴクカンモモノナラジュ」と親子二人、歌い喚きながら、人一人通らぬ箱根山を歩いて行った。
多分、未だ塔ノ沢なのだろう。眼下にお菓子のように綺麗な家が、早川の真っ白な水沫と共に眼に鮮かだ。水涸れの橋を渡り、観音坂と建札の立った杉並木の坂を登る。あまり変化のない山路に一郎は倦きてしまったらしい。「箱根の山は」を二人とも歌わなくなると、「ねえ、お父さん、お山に登ろうよ」と早川を越えて、向う側の陽に輝く、見るからに暖かそうな山々を指さす。
「ここもお山なんだよ。あの山だって向うに行って見れば、これと同じような道のある山なんだよ」こう言い聞かせても一郎にはさっぱり分らない。ただもう首を振って、「いやいや、お山に登るのッ」の一点張りだ。バカな親父はそのうち本気に腹を立て、「おい、それじゃアここから登れッ」と幼な子の襟首を掴み上げるようにしながら、一郎を左手の見上げるばかりの切り立った山の下へ連れて行った。
「ウン登るよ」大人なら自棄で登るとも思えるが、子供は本当に、彼の概念で山と思うものに、自分の足で登って見たいらしく、オーバーの背中を丸め、小さい両手を前に出し、よちよち熊笹と茨の傾斜面に足を進めた。