Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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むらさきだいなごん

紫大納言

坂口 安吾

Lesen Sie 紫大納言 (むらさきだいなごん) von Sakaguchi Ango (坂口 安吾) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.899 Zeichen · 26 Bildschirme

Aozora Bunko

すぐ目のさきの叢の上に、ひとりの童子があぐらをくんでいるのである。たしかに童子にまぎれもないが、粗末な衣服を身にまとい、クシャクシャと目鼻の寄った顔立は、大人、いや、むしろ老爺のようである。髪の毛は河童のように垂れさがり、傲慢に腕を組み、からかうような笑いを浮べて、すまして顔をのぞいている。視線が合ったが、平然として、ただ、しげしげと顔をみている。

「ゆくえも知らぬ――」

と、童子は大きな口をあけて、とつぜん唄った。ひどく大きな口だった。そのせいか、目と鼻が、更に小さくクシャクシャ縮んで、かたまった。

大納言は、びっくりした。と、とたんに童子は猿臂をのばして、大納言の鼻さきを、二本の指でちょいとつまんだ。

「恋のみちかな」

童子は下の句をつけたした。そうして、手をうち、自分の頬をピシャピシャたたき、彼を指し、大きな口を開いて、笑った。

「ゆくえも知らぬ、恋のみちかな」

再び、童子は、大納言の鼻をつまんだ。予測しがたい素早さである。身をかわすひまはなかった。アと思うまに、もう手をたたいて、唄っている。

ひどく不潔な顔である。猿の目鼻をクシャクシャとひとつにまとめた顔である。