Japanische Klassiker mit Furigana
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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 細雪 (ささめゆき) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 150.580 Zeichen · 287 Bildschirme
「お春どん、モスキトン持って来て」
と、幸子が奥へ怒鳴っている暇に、又庭へ降りて行って、今度は平戸の花の萎んだのを摘みはじめた。此処の平戸は四五日前に真っ盛りであったのが、今は六分通り萎んで、見苦しくよごれているのであったが、分けても白い花の、紙屑のように黄色く汚らしくなったのを、気にして一つ一つ取って捨て、あとに雄蘂が髯のように残ったのをも、丹念にむしって行くのであった。
「ちょっと! モスキトン来てまっせ」
「ふん」
と云ってから、又暫く毟っていて、
「此処、掃除さしといてんか」
と、漸く妻のところへ上って来た貞之助は、モスキトンの容器を受け取る途端に、
「おや」
と、彼女の眼の中を見た。
「何ですねん」
「ちょっと、此方の明るい所へ来て見なさい」
もうさっきから日が暮れかけていて、葭簀張の下は一層暗くなっているので、貞之助は幸子をテラスの端の方まで引っ張って行って、夕方の光線の中に立たせた。
「ふうん、お前、眼の中が黄色いなあ」
「黄色い?」
「ふん、白眼のとこが黄色うなってる」
「そしたら、何やろ、黄疸か知らん」
「そうかも知れん、何か脂ッこいもん食べたか」
「昨日ビフテキ食べたやおませんか」