Japanische Klassiker mit Furigana
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えほんのはる
絵本の春
泉 鏡花
Lesen Sie 絵本の春 (えほんのはる) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.447 Zeichen · 13 Bildschirme
「厭だ、小母さん。」
「大丈夫、私がついているんだもの。」
「そうじゃない。……小母さん、僕もね、あすこで、きれいなお嬢さんに本を借りたの。」
「あ。」
と円い膝に、揉み込むばかり手を据えた。
「もう、見たかい。……ええ、高島田で、紫色の衣ものを着た、美しい、気高い……十八九の。……ああ、悪戯をするよ。」
と言った。小母さんは、そのおばけを、魔を、鬼を、――ああ、悪戯をするよ、と独言して、その時はじめて真顔になった。
私は今でも現ながら不思議に思う。昼は見えない。逢魔が時からは朧にもあらずして解る。が、夜の裏木戸は小児心にも遠慮される。……かし本の紙ばかり、三日五日続けて見て立つと、その美しいお嬢さんが、他所から帰ったらしく、背へ来て、手をとって、荒れた寂しい庭を誘って、その祠の扉を開けて、燈明の影に、絵で知った鎧びつのような一具の中から、一冊の草双紙を。……
「――絵解をしてあげますか……(註。草双紙を、幼いものに見せて、母また姉などの、話して聞かせるのを絵解と言った。)――読めますか、仮名ばかり。」
「はい、読めます。」
「いい、お児ね。」
きつね格子に、その半身、やがて、たけた顔が覗いて、見送って消えた。