Japanische Klassiker mit Furigana
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みどりのめ
緑の芽
佐左木 俊郎
Lesen Sie 緑の芽 (みどりのめ) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.815 Zeichen · 10 Bildschirme
草の芽はゴム細工のような、さもなければセルロイド細工のような新芽を土の中から擡げていた。エボナイトのような弾力と光沢を持った、あらゆる樹木の梢に群がる木の芽は、ずんずんと日毎にふくらんで行き、いろいろの小鳥は思い思いの音色で木の枝に囀り廻っていた。けれども、何ら沈黙を破るべき機会を与えられなかった。
その沈黙! しかも、もの哀れな、涙ぐましい沈黙は正午になっても続いていた。松三は、母親の無い自分の子、この力無い表情を視続けることに堪えられなく思った。
「菊枝!」と、松三は突然、思い出したように彼女を呼んだ。
その時、彼等父娘はちらちらと崩れかかる榾火を取り巻いて、食後の憩いを息ずいていたのであったが、菊枝は野を吹く微風に嬲られて、ゆれる絹糸の縺れのような煙を凝視めて、悩ましい空想に追い縋るという様子であった。が、彼女は、父親から呼びかけられて初めて僅かに顔をあげた。
「おめえな、菊枝……」と、父親は重苦しい口調でこれだけ言って、深く煙草の煙を吸い込んだ。
「え」と菊枝は、声に出しては言わなかったけれども、そんな風な表情で、人なつこい眼を父の方に向けた。