Japanische Klassiker mit Furigana
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うつくしいむら
美しい村
堀 辰雄
Lesen Sie 美しい村 (うつくしいむら) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 42.946 Zeichen · 84 Bildschirme
其処からは、村の峠が、そのまわりの数箇の小山に囲繞されながら、私たちの殆んど真向うに聳えていた。――梅雨期には、その頃の私自身の心の状態のせいだったかも知れないが、その奥には何かしら神秘的なものがあるように思えてならなかった。その峠も、いまは何物をも燃やさずにはおかないような夏の光線を全身に浴びながら、何んだか炎のようにゆらめいているような感じで、私たちに迫っていた。……
彼女は、その燃ゆるような山なみを、サナトリウムの赤い屋根を前景に配置しながら、描いてみたいと言った。そしてそれを適当な角度から描くために、そんなはげしい光線の直射するのにも無頓著のように、その空地のやや小高いところを選ぶと、三脚台を据えて、その上へ腰かけ、斜めにかぶった運動帽の下からときどきまぶしそうな顔を持ち上げながら、その下図をとりだした。……私は彼女の仕事の邪魔にならないように、いつものように彼女を其処に一人きり残しながら、再びさっきの土手に出て、やや大きなアカシアの木蔭を選んで、そこに腰を下ろしていた。そうして私の前の小さな流れの縁を一羽の鶺鴒が寂しそうにあっちこっち飛び歩いているのにぼんやり見入っていると、突然、私の背後のサナトリウムの方からその土手をうんうん言いながら重たそうに荷車を引いてくる者があるので、私は道をあけよう