Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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よしつねのむすめ

義経の女

山本 周五郎

Lesen Sie 義経の女 (よしつねのむすめ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.735 Zeichen · 8 Bildschirme

Aozora Bunko

そのとき千珠は、屋形の廂にいて、京から来た文を読んでいた。建久二年の、正月もまだ中ごろのことだったが、伊豆のくには暖かくて、簀子縁のさきにある蔀格子から、やわらかい午後の光といっしょに、さかりの梅の香が噎せるほどもよく薫ってきた。文のぬしは千珠にとっては義理の姉にあたり、讃岐といって、二条院に仕えているひとだった。歌人としても名だかいひとだけに、やさしく巧みな手つきで「去年十一月に都へのぼった頼朝の、参内の儀のゆかしく美しかった」ことや、「その供をしてのぼった兄の駿河守(広綱)にひさびさで逢えたよろこび」などを眼に見るように書きつらねたうえ「つたないもので恥かしいけれど」といって五六首の歌が添えてあった。千珠はそこまで読んできて、ふとその歌の中の一首につよく心をひきつけられた、それはふしぎなほど心をひく歌だったので、われ知らずそっと口のなかで繰り返してみた。

あと絶えて浅茅が末になりにけりたのめし宿の庭の白露

いかにもはかなく寂しげな詠みぶりである。口ずさんでいると、荒涼とした秋の野末に、たった独りゆき暮れたような、かなしいたよりない気持になって、千珠は思わずほっと太息をついた。